皆さん、日野富子というと、どのようなイメージをお持ちですか?
私が、ちょっと調べたところですと、次のようなものがあります。
・足利八代将軍・義政の正妻ですが、妾を追い出し、自殺に追い込んだ。
・次期将軍が現将軍の弟と決まっていたにもかかわらず、実子に男の子が生まれるや強引に実子を将軍に推し、応仁の乱の原因を作った。
・流通経済が発展してきた室町時代にあって、人、物の交流が都と地方とで活性化していると見るや、都の周辺に伊勢神宮を修理すると言って7か所の関所を設け、税収を得た。
・関所で得たお金は、応仁の乱で戦争中の味方大名に高利で貸し出すほか、更には、敵方大名にまで貸付けて、応仁の乱を11年間と長期化させた。
・さらに、関所で儲けたお金で米を買い占め、米価格を不当に高値にした後、売りさばいた。
どのエピソードもナカナカのものばかりですね。
だけど、本当にお金儲けが上手かったようで、もし、今の日本の政治家にいれば、ひょっとして、100兆円とも言える借金も対策してくれるかもしれません。
それでは、今回は、日野富子とお金、そしてその悪女説について、その時代背景を見ていきながら御紹介していきます。
目次
★室町時代に入っての貨幣経済の発展
室町時代に入って、農機具の向上により農業が、明から銅銭は入ってくることにより、農業、商業が発達していきます。
特に、日本製の兜、鎧、刀などは、明に輸出すると飛ぶように売れていきました。
これに伴い、普及したのがお金ですね。このお金を通じて都と地方との取引も活況を呈していきます。
室町時代こそ、本格的な貨幣経済の始まり、資本主義社会の先駆けだと言えます。
これにより、また経済の発達は文化の発達を促します。
能、茶の湯、水墨画、生け花といった、この当時に発達していった文化を、世にいう北山文化といいます。
そして、いわゆる金閣寺、銀閣寺といった雅やかなお寺も、室町時代に建てられたものです。
このような時代背景の中、日野富子は将軍の正妻として権力を得て、天才的な金儲けの才能を発揮していきます。
それでは、ここからは、具体的にどのような方法で儲けていったかを御紹介していきます。
★関所で儲ける
前節で説明したとおり、時代背景が、農業と商業の発達により、都と地方との流通の繁栄をもたらしています。
このため、富子は、都の主要道路7か所に関所を設け、伊勢神宮改修工事のためという名目で、通行税を徴収するという施策を行いました。
ちなみに、なお、日野富子が伊勢神宮の改修工事を行ったという記録は確認されておりません。
★お金を貸して儲ける
次に富子は、通行税で得たお金を、高金利で貸し出すことによって、更に儲けを拡大していきました。
繰り返しになりますが、当時、貨幣経済の発達により、商業の発展が盛んであり、お金を借りるという人は多く、金貸し業はとても利殖を生んでいった。
★米を買い占めて儲ける
さらに、富子は儲けたお金で大量に米を買いあさります。そして、これから飢饉で米が無くなるという噂を流し、買っていた米を高値で売りぬくという荒行を行い、利殖を得ていきました。
★当時の日野富子に関する記録
これらのような方法で、莫大な富を築いていった富子、当時の記録では、「天下の富はことごとく御台所(富子)の手に集まってくる。」(大乗院寺社雑事記)と記録されています。
また、当時の将軍義政の文化活動の知人の中には、夏の夕暮れと、御台所(日野富子)とを掛け合わせ、「くれそうで、くれない(日が暮れない、お金をくれない)」と言っていたそうです。
★では日野富子は悪女だったのか
よく日本三大悪女として、北条政子、淀殿と並び称される日野富子。
その一番の要因が、自分の子・義尚を将軍にしようとして、応仁の乱を引き起こしたことが原因となっているようですが、最近の研究では、日野富子は八代将軍義政の弟・義視の後に自分の子・義尚を将軍にすることで納得していたとされています。
ただ、お金を応仁の乱に参戦している大名に貸し出すことによって、11年間もの間の長期戦となる一因を作ったということは事実のようです。
この悪女のイメージは、戦争を長引かせたというよりも、お金儲けに走ったというところが、かなり先行していると思われます。
そして、応仁の乱以降、室町政府は無力化し、日本は無政府状態となっていきました。
そんな中、地方各地では、無力の幕府に見切りをつけ、独自政権を打ち立てる武士が続出し、世は戦乱の世に向かっていきました。
★まとめ
・日野富子は悪女とされている。
・一方、日野富子はかなりお金儲けが上手かった女性である。
・具体的には、①関所を新しく作ってお金を得る、②お金を貸して儲ける、③米を買い占めて儲けるといった方法
・当時の記録にも、天下のお金は全て日野富子に集まるという記述がある。
・このお金儲けに走ったことが、日野富子の悪女説を助長していると思われる。